メディア学部メディア学科の三上義一教授の新刊『ASEAN and Regional Actors in the Indo-Pacific』(Springer Singapore, 2023) が刊行されました。(ハードカバー、電子書籍、インターネット配信)

三上教授が執筆したのは第8章『“Kamikaze” Syndrome from Russia to China to Myanmar:Fake History in a Post-truth Era Crushes Democracy and Ignites a War』(単著)で、ロシア、中国、ミャンマーの3ヵ国をケーススタディーとして論じています。

三上教授の専門分野であるジャーナリズムでは、いわゆる「フェイク・ニュース」の研究が進んでいますが、三上教授の仮説は、特に非民主的な独裁国家では、「ニュース」だけではなく「歴史」も為政者の都合の良い形で解釈され、自国民に押し付けられ、それが独裁政治や戦争の大義として利用されているのではないかというものです。

本研究の発端は、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻の数ヶ月前に「ウクライナ人とロシア人の歴史的一体性」という長文の論文を発表していたことに起因します。これは歴史的にウクライナがロシアの領土であり、現代においても「ウクライナ」という独立国家は存在しないと論じたものです。また、プーチン大統領は自らを元ロシア皇帝のピョートル1世の歴史的後継者だと考えているといわれます。ピョートル1世はロシアをヨーロッパの大国に押し上げた皇帝で、現代のロシアもそのような大国に相応しい領土を所有するべきだというのがプーチン大統領の政治的信念だといわれています。

ただ、ピョートル1世の躍進は約300年前のことであり、プーチン大統領の論理の妥当性はかなり疑わしいのではないか、というのが本論文の問いの一つであり、この点をヒントとして日本史の「神風」や中国共産党やミャンマー国軍の歴史観を検証しています。

著書はインターネットでダウンロードすることが可能で、一冊でも各章ごとでも購入することができます。また、紙のハードカバーとしても購入可能です。
書籍:https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-99-4020-2
第8章:https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-981-99-4020-2_8