ジャーナリズムを専門とし、メディア学部メディア学科の学部長・学科長を兼任される三上先生に、担当予定の授業やご自身の研究内容等についてお話を伺いました。

どんな授業を担当される予定ですか?

ジャーナリズム論

社会で何が起こっている、あるいは起こったのかを伝えるのがジャーナリズムです。ジャーナリズムというと皆さん新聞やニュース番組を思い浮かべると思いますが、新聞社同士を比較してみたり、民放とNHKを比較してみたりすると報じ方に違いが見られます。事実を伝えるという点では各社同じなのですが、伝え方が違うと受け手に与える印象が変わってきます。

この授業ではそんなジャーナリズムの基本を学びます。新聞の読み方やニュースとして事実が報じられる過程、社会の中での物事の見方、ジャーナリズムがなぜ大切なのか、といった基本的な考え方を学んでもらいます。授業の進め方としては、座学を中心に、新聞を実際に読んで考えてもらったり、気になった記事について発表してもらったりすることを考えています。この授業を通して、ジャーナリズムのリテラシーをぜひ身につけてほしいと思います。

出版メディア論

この授業では、雑誌や電子書籍などの出版物の多様性を多角的に考えていきます。かつて一世を風靡したフリーペーパー『R25』(2004年7月〜2017年3月にかけてリクルートが発行していたフリーペーパー)の栄枯盛衰の過程や、新しい書店のあり方や編集者の仕事や役割などを事例に考えていく予定です。

出版業界は今、不況であると思われがちですが、今の若者たちが紙媒体から離れているかというと、必ずしもそうではないと私は思うんです。大手出版社の雑誌の売上は減少傾向にありますが、毎年お盆と年末に開催されているコミックマーケットでは、大勢の若者が参加していますよね。他にも文学フリーマーケットの開催やフリーペーパーの発行など、今でもさまざまな人が活字媒体を作っています。それだけ出版にはまだ人を惹きつける魅力が存在しているのでしょう。活字媒体や雑誌に興味がある学生や出版物のデザインに興味のある学生にぜひ受けてほしいと思います。

普段どんな研究を行っていますか?

私は以前、報道機関で働いていました。働いていた当時は、携帯電話やインターネットがなく、写真もフィルムで撮っていたアナログの時代でした。アナログからデジタルの時代となった今、どうしたら伝統的なメディア(雑誌や新聞など)が生き残っていけるのかということを研究テーマの一つとしています。具体的に言えば、Amazon社のCEO・ベゾス氏がワシントン・ポスト紙を買収しましたが、それが成功したのかどうかを分析しています。

また、ミャンマー国内での報道がどのように行われているかというテーマでも研究しています。ミャンマーはおよそ50年にわたり軍事政権下にあり、国営メディアしかありませんでした。2011年頃を境に報道規制が緩和され、民間の新聞が発行されるようになり、2015年4月頃にアウンサンスーチー氏が政権を獲得してからは、報道が自由化されつつありますが、まだまだ規制があり、報道の自由が十分だとはいえません。そんなミャンマーの報道のあり方を研究しています。1991年にアウンサンスーチー氏の評伝を書き、その後文庫化され随時アップデートしてきました。今もたびたびミャンマーへ行き、取材しています。ミャンマーを取材した際の風景を撮ってきましたので、もしよければご覧ください。

民族衣装を着たマンダレー大学の学生と写真を撮る三上教授(後列、左から5人目)。
首都ヤンゴン近郊、チャウッターヂー・パゴダの長さ66mの巨大寝釈迦仏。ミャンマーでも最大規模を誇る。
ヤンゴンの中心部に位置するシェダゴンパゴダ。黄金に輝く仏塔を誇る、国を代表する寺院。
ヤンゴン市内の露天市場。
ヤンゴン市内のチャイナタウンのお祭りで歌い踊る華人系住民。

メディア実践演習の三上クラスではどんなことをしますか?

先ほどお話ししたジャーナリズム論と出版メディア論の内容と関連させて、演習クラスでは実際に新聞やフリーペーパーを制作してもらう予定です。

社会学部メディア表現学科の学生の例だと、企画立案から始め、実際に学内外へ取材に行き、記事にまとめて、『目白大学新聞』という新聞や『MEJImag』(めじマガジン)というフリーペーパーを制作してもらっています。『目白大学新聞』は年2回、『MEJImag』は年1回発行しています。

新聞や雑誌を作る際には、社会の動きにも目を向けることが大切です。例えば、ファッション雑誌を作るなら「洋服が好き!」という気持ちも必要ですが、アパレル業界の動向やどのような通販サイトの洋服が売れているのかなどを調査・分析しておくことが必要です。さまざまな業界のことを専門的に学ぶまでは行かずとも、社会に対する広い視野や考え方を、実際にジャーナリズム活動を行う中で学んでほしいと思います。社会の出来事に関心のある学生は、ぜひこの演習クラスに挑戦してほしいですね。

※社会学部メディア表現学科はメディア学部メディア学科の前身にあたります。2018年4月に改組されてメディア学部メディア学科が誕生しました。

この記事を読んでいるアナタへのメッセージ

社会に対して広い視野を持ち、社会の中で起こっていることを調査し分析するということは、将来どの業界に就職するとしても必要となります。例えば、飲料メーカーに入社したとしても、売れるドリンクを提案・開発するためには、ライバル社の動向や過去にどんなドリンクが売れたかなどを調査・分析しないと結果を出せないですよね。こうした調査・分析もジャーナリズムの一種だと思います。出版やジャーナリズムに興味がある方はもちろんですが、社会の見方を勉強したい方にも、ぜひメディア学部に来てほしいと思います。

プロフィール

氏名 三上 義一(MIKAMI Yoshikazu)
職位/担当分野 教授、学部長・学科長/メディアと社会・文化分野
専門 ジャーナリズム、出版、電子書籍などのデジタルメディア、報道写真、海外メディア、国際報道
担当予定授業
  • メディア文章表現
  • ジャーナリズム論
  • グローバルジャーナリズム論
  • 出版メディア論
  • フレッシュマンセミナー
  • ベーシックセミナー
  • メディア基礎演習A/B
  • メディア実践演習1/2/3/4
所属学会
  • 早稲田大学メディア文化研究所 招聘研究員
  • 日本生活情報紙協会(Japan Free Newspapers Association)
  • ASIAN AMERICAN JOURNALISTS ASSOCIATION (AAJA)
研究内容
  • インターネット時代の新聞・雑誌・出版のあり方
  • デジタルジャーナリズムの将来
  • 海外メディアの動向
  • フリーペーパーの今後
  • ミャンマー(ビルマ)における報道の自由
主な業績
  • 『アウンサンスーチー』(1991年講談社、1995年講談社文庫、2008年ランダムハウス講談社文庫、2012年角川BOOKWALKER電子書籍版)
  • 「ノーベル経済学賞学者はなぜ『黒人大統領誕生』を言い当てたのか」『オバマのアメリカ経済入門』(2009年 毎日新聞)
  • 『世界大不況からの脱出』 ポール・クルーグマン著 (翻訳) (2009年 早川書房)
  • 『ロイターの栄枯盛衰 ―デジタルメディアの誕生とその興亡』 (2010年 目白大学総合科学研究 第6号)
  • “The Role of Mobile & Social Media in Times of Crisis. Lessons from Japan’s Eastern Great Earthquake.” WAN-IFRA(世界ニュース新聞発行者協会)主催“Digital Asia 2011,”での発表講演。(2011年11月25日 香港)
  • 「電子書籍 紆余曲折10年の教訓」『メディアと表現 情報社会を生きるためのリテラシー』目白大学社会学部メディア表現学科編(2014年 学文社)
  • 「Why did the Digital Strategy of the Washington Post Fail? -The Success of the New York Times and the Failure of the Washington Post until the Buyout by Jeff Bezos」『プロジェクト研究 第10号』2014年度 早稲田大学総合研究機構(2015年)