地域メディア論やコミュニケーション論を専門とする牛山先生に、担当予定の授業やご自身の研究内容等についてお話を伺いました。

どんな授業を担当される予定ですか?

地域メディア論

近年グローバル化が進む一方で、地域活性化や地域のPRが重要視されています。例えば、最近は“地域PR動画”を公開する地方自治体が増えていますよね。この授業では、地域におけるメディアがどう変わってきたか、地域の中でのメディアの活用方法を具体的な事例とともに学びます。授業の前半では、広報誌や地域新聞、ケーブルテレビ、ラジオといった地域メディア媒体の変化を見ていきます。後半では、地域課題に沿ってメディアをどう使っていくべきかを考えていきます。例えば、「商店街の宣伝にインターネットをどう活用するか」、「災害発生時にラジオはどうあるべきか」、「聖地巡礼にメディアをどう活かすか」といったことを題材に扱います。

この授業を通して、「メディア」というものを受け手の視点から捉えるだけでなく、地域におけるメディアの役割や意義、情報発信の手法を、情報発信者の視点に立って学んでほしいと思います。メディアの可能性を学びたい学生にオススメの授業です。

※聖地巡礼:アニメや映画などの物語の舞台やモデルとなった場所を実際に訪れること。

インターネット・コミュニケーション論

今やインターネットは私たちの日常生活の中で欠かせない存在となっています。この授業では、インターネットを介したコミュニケーションが社会にどう関わっているかを考えていきます。例えば、「なぜこんなにもSNSが発達したのか?」、「なぜ“炎上”は起きるのか?」、「YouTuberが果たしている役割とは?」といったことを題材に扱う予定です。

この授業を通して、インターネットの役割を主体的・批判的に見つめ直し、そのあり方を考えられるようになってもらえればと思います。インターネットに興味がある学生や社会におけるインターネットの役割について学びたい学生にオススメです。

※炎上:インターネット上の書き込みや投稿動画内での不謹慎な行動や失言などに対し、非難するコメントが殺到し収拾がつかない事態・状況のこと。

普段どんな研究を行っていますか?

「メディア」というと大手のテレビ局や全国紙の新聞などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、それだけでなくたくさんの種類があります。私は元々地域のテレビ局で制作を仕事としていたこともあり、特にそうした地域に根ざしたメディアの役割に関心を持って研究を行っています。

先ほどの地域メディア論のお話とも関連しますが、グローバル化の時代だからこそ地域を活性化させることがとても重要になっています。そのような状況における地域のメディアの担い手、つまり情報発信者のあり方を考え、意味付けをしたいと思い、最近は「地域価値を高めるためにメディアはどんな役割を果たせるのか」をテーマに研究を進めています。

“メディア・エコロジー”の視点で見ると、地域メディアって動きが面白いんです。地域新聞社がラジオ局とタッグを組んで地域を盛り上げようとするといった具合に、複数の地域メディアが連携したり競合したりすることで、地域で起きている問題の改善・解決まで主体的に関わっていくこともあるんです。また、インターネットの普及により、インターネットテレビを通してご当地アイドルが全国のファンと交流することなどが可能となりました。地域メディアも地域外の人々に情報発信を行うことができる状況にある今、地域メディアには無限の可能性が広がっています。

これからも地域メディアの事例研究を進めながら、「地域や社会を元気にするようなメディアってどうあるといいのかな」ということを考えていきたいですね。

※メディア・エコロジー:日本では明治時代以降、さまざまなメディアが現れては時代とともに成長・衰退してきました。このメディアの変遷を生き物の生態系のように捉える考え方を「メディア・エコロジー」と言います。

メディア実践演習の牛山クラスではどんなことをしますか?

「ソーシャルメディア時代の情報発信手法の研究」を演習クラスのテーマとする予定です。実際の社会や地域をフィールドとして、さまざまなメディアを活用した情報発信手法を考え、自分たちで実践し、責任ある“担い手”となることを目指してもらいます。3年生の春学期では、まずは商店街のフォトスポットの考案やマップ制作、またテレビ局の見学などのプロジェクト企画に参加して勉強します。そして、秋学期では自分たちで企画を立てて情報発信を実践します。

社会学部メディア表現学科の学生の例を挙げると、2017年は静岡県熱海市をフィールドとして、「熱海のグルメ」をテーマに市役所やスイーツ店などを取材し、若者向けの冊子を制作し配布しました。学生は自分たちでゼロから企画を考えてこのテーマを設定し、各自でアポを取ってから取材したことで、学生の視点からのオリジナルの冊子を制作することができました。このほかにも、新宿区のケーブルテレビ局と連携して地域情報番組のPR方法を考えたり、商店街のCMを制作したりと、現代の多様なメディアを駆使して情報発信の演習を行います。連携先や取り組む内容は毎年変えていく予定です。

「自分たちで情報発信をしたい!」、「メディアに対する視野を広げたい!」、「学校の外でも活動したい!」、そんな好奇心旺盛な学生さんには、ぜひこのクラスの演習にチャレンジしてもらいたいと思います。

※社会学部メディア表現学科はメディア学部メディア学科の前身にあたります。2018年4月に改組されてメディア学部メディア学科が誕生しました。

社会学部メディア表現学科のゼミ学生との広島フィールドワーク
演習の一環で「ハッピーロード大山TV」に出演する牛山先生(後列右から2番目)とゼミ学生(後列右から1番目)
熱海を取材した冊子「Siru」完成の様子

この記事を読んでいるアナタへのメッセージ

今はメディアが多様化したことで、自分たちで情報発信を行えるチャンスが広がっています。そして、メディア学部には、メディアの役割を理解した上で、責任を持って情報発信を行うことを学び実践できる環境があります。そうしたメディアの役割の理解や情報発信に興味のある方にぜひ来てほしいと思います。メディア学部で情報発信の責任や楽しさ、メディアの可能性を感じてみませんか?

プロフィール

氏名 牛山 佳菜代(USHIYAMA Kanayo)
職位/担当分野 准教授/メディアと社会・文化分野
専門 地域メディア論、コミュニケーション論、インターンシップ
担当予定授業
  • メディア調査法I
  • メディア取材法
  • メディア・リテラシー論
  • インターネット・コミュニケーション論
  • 地域メディア論
  • 放送論
  • フレッシュマンセミナー
  • ベーシックセミナー
  • インターンシップ入門
  • メディア基礎演習A/B
  • メディア実践演習1/2/3/4
所属学会
  • 日本マス・コミュニケーション学会
  • 社会情報学会
  • 日本インターンシップ学会
  • 日本ビジネス実務学会
  • 日本出版学会
  • 日本情報経営学会
  • 地域デザイン学会
研究内容
  • 地域メディア・エコロジー研究(地域情報の生成過程の変化、地域PRのためのメディア活用等)
  • メディアにおける担い手育成(インターンシップの活用方法等)
主な著書・論文
  • 『地域メディア・エコロジー論 地域情報生成過程の変容分析』(単著)(2013年 芙蓉書房出版)
  • 『地域活性化の情報戦略』(共著)(2016年 芙蓉書房出版)
  • 『インターンシップ キャリア形成に資する就業体験』(共著)(2015年 学文社)
  • 目白大学メディア表現学科編『メディアと表現-情報社会を生きるためのリテラシー』(共著)(学文社、2014年)
  • 『現代地域メディア論』(共著)(2007年 日本評論社)
  • 『コミュニケーション学入門-進路とキャリア設計のために』(共著)(2003年 NTT出版)
  • 「地域価値向上に向けた地域動画放送番組の活用 ーハッピーロード大山TVの取り組みを事例としてー」『2017年社会情報学会(SSI)学会大会論文集』(2017年)
  • 「ゼミ活動における長期プロジェクトの実施効果とその可能性」『ビジネス実務論集』35号(2017年)
  • 「伝統的地域メディアの変容—地域紙経営者調査を手がかりとして」『目白大学総合科学研究』10号(2014年)
  • 「郡上村」の窓から異世界を俯瞰する―むらの社会・文化は≪変化≫を止めない―」『コミュニケーション科学』第41号(共著)(2014年)
  • 「日本の地域メディアにおける地域情報形成過程に関する考察」『コミュニケーション科学』第22号(共著)(2005年)