メディア学部に着任予定であり、情報教育や教育工学を専門とする原先生に、担当予定の授業やご自身の研究内容等についてお話を伺いました。
どんな授業を担当される予定ですか?
メディアとモラル
この授業は、従来の社会学部メディア表現学科での授業で扱っていた内容(携帯電話やスマートフォン、テレビ等)に加え、AI(人工知能)やAR(拡張現実)・VR(仮想現実)といった、最近登場した情報技術も扱っていきます。
そうした最新の情報技術に対応した個人や企業のモラルがどうあるべきか、そのモラルを守るために法律はどうあるべきかについて考えていきます。新聞などで取り上げられているトピックとその根底にある考え方を対比しながら学んでいきます。座学でただ話を聞くだけでなく、e-Learningや実際に事例を自分で検索してみるということを取り入れながら授業を展開していくつもりです。
この授業を通して、モラルに関連する法律や総務省の取り組みなどの知識も身につけてほしいですが、やはりメディアの良い使い方を学んでほしいと思います。“モラル”というと悪いことを是正する“消極的なモラル教育”が多いですが、この授業ではメディアの良い使い方を広める“積極的なモラル教育”をしていきたいと考えています。
エデュテイメントシステム制作演習
この授業は、教育現場でのICT(情報通信技術)活用の状況を学んだ上で、教育現場で使える教材をみんなで作ろうという演習形式の授業です。
まずは、教材開発の基本的な考え方や教材としてどうあるべきか、最近の動向、アクティブラーニングでの教材活用の事例を学びます。それらを踏まえて、小学校や幼稚園の子どもたちが楽しく学べるような教材を、PowerPointなどのソフトウェアを使って開発し、他の受講生が作った教材を使ってみて、お互いに評価し合います。学習ゲームや簡単なプログラミングに興味のある学生向けの授業にしていきたいですね。
普段どんな研究を行っていますか?
研究テーマはいろいろですが、主に情報モラル関連ですね。小学生たちがいろいろなメディアを積極的に正しく使えるような本作りに取り組んでいます。最近だと情報モラルに関する子ども向け・先生向けの2種類の本を作りました。子ども向けのほうは最近出版されたばかりで、メディア表現学科の1年生にも協力してもらっています。小学生に向けて情報モラルに関するアドバイスを書いてもらいました。
あとは、情報教育もテーマとしていて、子どもたちがメディアの使い方を学べる特別活動の授業などを小学校の先生と作っています。子どもたちが「こんなことを勉強したいからこんなツールを使おう」、「こんなことを解決したいからスマホを使おう」という思考を持ってくれるような授業展開の実現を目指しています。月に1度、実際に東京や福島などの小学校を視察しています。
特に福島県では東日本大震災以降、地域再生が課題としてあるので、地域再生のためのメディア活用についても考えています。地域に根ざした子どもというか、地元を離れてもまた戻ってきて、地元で活躍してくれる子を育てるためのカリキュラムについて研究して7年になります。
メディア実践演習の原クラスではどんなことをしますか?
演習クラスでは、先ほどお話しした情報モラル関連の本の中身を一緒に考えたり、起業家教育を行ったりします。
起業家教育では、模擬的に企業を作って、商品開発を行ったり、商品の販売方法や宣伝方法を考えたりするなど、実践的なことを行います。自分たちで商品開発などを行うのはなかなか大変ですが、「ユースエンタープライズ・トレードフェア」という産学連携イベントで、過去に、京都商工会議所賞や異能工房賞(企業から送られる賞)などを6度獲得しています。このイベントへの出展を通して、他大学の学生とも競い合うことで、学生は自分たちの甘さに気づいたり、考え方などを身につけたり、達成感を得たりすることができているかなと思います。学内だけでの学びではぬくぬくと過ごしてしまうので、ちゃんと他大学との違いを見て、力をつけていってもらえるようにすることが大事だと考えています。
この記事を読んでいるアナタへのメッセージ
まず、「自分たちの身の回りにあるメディアがどんな役割を果たしているのか」、「メディアを使って自分ならどんなものを見たい・使いたいか」、「どうしたらそれを他の人にも使ってもらえるのか」などを勉強したい人に、メディア学部へ来てほしいと思います。そして、メディア学部で学ぶ中で、情報社会の仕組みに早めに気づき、積極的にメディアを活用できる仕組みを考えていってほしいと思います。
今まで私たちは石油によって暮らしを便利にしてきましたが、これからの時代は情報が私たちの暮らしを便利にしてくれるとの見方が広まっています。石油は掘れば出てきますが、情報はそうではありません。情報は誰かが提供しない限り出てこないのです。その情報の提供というのは、皆さんがスマホを使って行っている、SNSへの書き込みやメールの送受信も当てはまります。つまり、日常的に皆さんも自然と情報を他者へ提供しているのです。ですが、このことに気づいていない人が多くいます。このような今の情報社会の仕組みや裏側に、若いうちから気づいてほしいと思います。
メディア学部ではこうしたことも学べますので、消極的にならず、積極的にメディアを活用できる仕組みを一緒に考えていきましょう。
プロフィール
氏名 | 原 克彦(HARA Katsuhiko) |
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職位/担当分野 | 教授/メディアと社会・文化分野 |
専門 | 情報教育、教育工学、小学校教育 |
担当予定授業 |
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所属学会 |
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研究内容 |
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主な著書・論文 |
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