7月15日(日)の第3回オープンキャンパスの中で開催された、メディア学部開設記念公開講座「新しいコンテンツ開発を目指して〜プリキュア15th誕生秘話〜」の様子をお伝えします。

“子供は絶対忘れない” 公開講座の様子をレポート! 前編

当日は最高気温36度という猛暑日。新宿キャンパス内でもあちらこちらで蝉の鳴き声が聞こえていました。そんな暑さに負けず、今回のオープンキャンパスも多くの来場者の方でにぎわいを見せ、公開講座にも150名を超える在学生や一般の来場者の方が参加しました。

今回の公開講座の講師は、東映アニメーション(株)の執行役員・第一映像企画部長の鷲尾天(わしお たかし)さん。人気アニメ・プリキュアシリーズの初代プロデューサーを務めてこられた鷲尾さんは、プリキュアシリーズ15周年を迎えての誕生秘話や作品作りにおいて心がけていることなどについて、エピソードを交えてお話しくださいました。

今回の講師・鷲尾天さん。

目白大学・沢崎達夫学長の挨拶、溝尻真也先生による開講の趣旨の説明がなされた後、鷲尾さんが登壇しました。

まず、講演のテーマとして鷲尾さんがホワイトボードに書いたのは“子供は絶対忘れない”という言葉。続けて、聴講者に「子供の頃に観ていたアニメは?」というアンケートを採り始めました。『デジモン』『ドラゴンボール』『おジャ魔女どれみ』など、鷲尾さんの口から次々と読み上げられる作品名の懐かしさに、聴講者からは自然と声が上がります。さらに、ホワイトボードにさらりと絵を描き上げ、「子供の頃に観ていたので練習していなくても覚えていて描ける」と言葉を続けます。

“子供は絶対忘れない”という言葉が意味することとは…?

鷲尾さんは、子供の記憶に残る作品を作りたいと思い、東映アニメーション(株)に入社。さまざまな作品に携わる中で、「ヒットさせたい!」などの“欲”があるとうまくいかないことに気づき始めた折、「女児向け作品を作ってほしい」とのオファーが来たとのこと。当時、女児向けアニメに一度も携わったことがなく、どんな作品にすればよいのかと困った鷲尾さんは、「好きにやっちゃえ」と無欲の状態で企画を考え始めました。

自身がアクションものなど男子向けコンテンツが好きだったこと、中でもバディものを作りたいという想いから、「変身アクション」「バディ」をキーワードに、“男の子が好きなものを女の子向けに作ってもいいのでは?”と考え、製作する作品のコンセプトを「女の子だって暴れたい」と設定。このコンセプトを実現してくれそうな監督として鷲尾さんが指名したのが、アクションアニメを得意とし、『ドラゴンボールZ』などを手がけてきた西尾大介監督でした。

西尾監督の指揮のもと製作されたシリーズ第1作『ふたりはプリキュア』。ユーモアを交えながら第1話の試写会までにあったさまざまな苦労話を話すほか、5年間にわたりプロデューサーとして携わった感想として「嵐のような日々で当時の記憶がない」と振り返る鷲尾さんに、会場からはたびたび笑い声がこぼれていました。

『ふたりはプリキュア』はターゲット層とする4〜6歳女児の視聴率がとても好調で、翌年放送されたシリーズ第2作『ふたりはプリキュアMaxHeart』でもその人気は続きました。作品関連グッズが販売されると品薄状態が続き、特に作中に登場する変身アイテムは、記録的大ヒットとなりました。

その人気を受けて、会社から「プリキュアシリーズを常に4〜6歳女児が観たいと思える作品にせよ」というミッションが鷲尾さんに下ります。同じ作品を長く続けていると、登場キャラクターが増えることなどから、話の展開が複雑化しやすく、新規の視聴者を取り込むのが難しいとされています。さらに、当時は同じく女児をターゲットとしたカードゲームと人気を二分している状況でした。

そこで、「“プリキュア”という存在を残したまま、新しい作品を作れないか?」と現場スタッフたちと話し合う中で、“作品ごとに全キャラ・世界観を入れ替える”という当時の女児向けアニメではまだ珍しかった方法をとることを決断。こうしてシリーズ第3作となる『ふたりはプリキュアSplash☆Star』が製作されました。

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