2018年1月23日(火)に行われた社会学部メディア表現学科主催の学科講演会の様子をご紹介します。以下の記事は社会学部メディア表現学科4年・中山徹さんが執筆したものです。

メディア表現学科主催学科講演会 報告

2018年1月23日、映像やデヂタル文化を軸にメディア社会の諸問題に取り組む気鋭の若手研究者・松本 健太郎先生(二松学舎大学文学部都市文化デザイン学科准教授)を講師にお迎えし、社会学部メディア表現学科主催の学科講演会『ゲーム化する世界 スマホ時代の社会学』が開催されました。

ご講演中の松本健太郎先生(渡邉和男撮影)

スマートフォンの普及、中でもアプリゲーム『ポケモンGO』の登場は、コミュニティの変化、地域活性化といった、これまでのゲームになかった「リアリティとバーチャルとの融合」を生み出しました。しかし、一方で、ながらスマホによる事故、プレイヤーと非プレイヤーとの認識のズレといった問題を表面化させもしました。私たちの生きている世界は、ゲームを通じて、「情報の出入りする孔が幾つも空いた(多孔化した)状態」になり、「画面に向き合うプレイヤーの行為と画面外における社会との間にある種のあつれきを生んでいる」のです。かつてWiiスポーツが出てきた折には、ゲーム内のプレイヤーとゲーム外の現実の自分はいわばイコールの関係にあったのですが、『ポケモンGO』の登場とともに、現実空間にいる自己アイデンティティは格段に複雑化するに至りました。

ゲームの世界は、いまや、社会と人間、人間と人間の関係に大きく影響を及ぼし、同時に、虚構と現実をめぐる関係を入り組んだものにし始めています。そうしたなかで、技術を使いこなしているつもりが、実は技術に使い倒されている危うい人間の姿も垣間見えてきています。

松本先生は、以上のような議論を、多くの興味深い実例や先行研究を紹介しながら、説得力豊かに展開されました。講演終了後には、「ゲーム化する社会において、リアリティの認識はどう変化していくのか?」といった質疑応答もあり、テーマの内容は一段と深みを増しました。

ゲームを考えることは、単なる遊戯の領域を超え、現代人、現代社会、現実認識のあり方を問うことにもつながる――メディア技術と人間との関係をテーマとした松本先生のご講演には、来年度からメディア学部メディア学科に生まれ変わるメディア表現学科の最後を飾るにふさわしい充実した内容がぎっしりと詰まっていました。

(メディア表現学科4年 中山徹 記)