メディア学部に着任予定であり、社会心理学を専門とする川端先生に、担当予定の授業やご自身の研究内容等についてお話を伺いました。

どんな授業を担当される予定ですか?

メディア社会論

メディアは社会とそこで生きる人々に大きな影響を与えてきましたが、この授業では、メディアを介したコミュニケーションが社会でどのような役割を果たしているかを考えながら、メディアと社会の関係を理解することを目的としています。内容としては、メディアが社会の変遷とともにどのように誕生し、発達してきたかということと、社会にどう影響を与えてきたかということを、さまざまな具体的な事例から考えます。例えば、世論や政治、戦争、環境問題などをテーマにメディアが社会に影響を与えた事例を取り上げていきます。

この授業を通して、メディアが社会をどう変えてきたか、また社会で起こった問題にメディアがどう関わっているかなどについて理解し、考えてほしいと思います。

メディアと心理

日常生活においてメディアはとても身近な存在ですが、それらが私たちにどのような心理的影響を与えているのかを幅広く考えていきます。心理的影響の「心理」には、認知(知ること)や感情、行動という側面がありますが、それぞれの側面からメディアの心理的影響について考えます。それによって「メディアとどう接していったら良いのか」、「メディアの影響って具体的にどんなものがあるか」、ということへの理解を深めていきます。

メディアと心理で扱う題材はさまざまです。「SNSやインターネット、あるいはドラマ・ 映画のような娯楽コンテンツは私たちにどのような影響を与えるのか」、「暴力シーンのあるドラマを見たり、攻撃的なゲームをプレイしたりすると、人は攻撃的になってしまうのか」、また「人を効果的に説得するためにはどうしたらいいのか」、「それを広告にどう活かせるのか」、などといったことも取り上げます。

普段どんな研究を行っていますか?

私の専門は社会心理学ですが、その中でも特にメディアが人々に与える心理的影響について研究を行っています。

現在の研究テーマは、近年社会で大きな問題となっている環境問題に関する報道の影響です。環境問題の解決のためには、多くの人々が環境問題の深刻さを理解して環境に良い行動をすることが重要です。どのような報道がより人々の行動に影響を与えるのか、また、人々はどのように環境問題報道を理解しているのかなどを探る研究をしています。具体的には新聞やテレビニュース番組などの報道内容を分析したり、人々に質問紙調査を行ったり、インタビュー調査を行ったりしています。

メディア実践演習の川端クラスではどんなことをしますか?

現在の社会学部メディア表現学科のゼミ学生が行っている例をお話しすると、今年度は千葉県のある城下町で観光振興を目的としてNHK大河ドラマを誘致している活動を調査しました。実際に現地へ行き、大河ドラマ誘致委員会や観光協会の方にお話を伺ったり、勉強会に参加したりしました。調査の結果から、若者の視点から協力・支援できることについて皆で議論し、最終的にはツイッターを使った情報発信による支援を誘致委員会の方に提言しました。今後は実際にツイッターを使って観光振興のお手伝いをしていく予定です。

このように、メディアが人にどう影響を与えるのかを軸に、さまざまなフィールドに出て、現場でのコミュニケーションを通して実践していくことを今後もやっていきたいですね。

この記事を読んでいるアナタへのメッセージ

メディアに関して学ぶというと、どちらかというと「どうやってコンテンツを作るか」、「どのような情報を伝えるか」ということに注目しがちですが、メディアを使ったコミュニケーションで重要なのはそれだけではありません。コミュニケーションが与える影響を考えたり、そこで行われているコミュニケーションの全体像を客観的に見たりする能力が必要です。単に「どう作るか」、「どんなメッセージが送られるか」だけでなく、「社会全体にどう影響するか」、「人の心にどのように影響するか」ということを考えて理解できるようになってほしいと思います。メディアと心理について考えたい人、メディアが社会に与える影響に興味がある人に、ぜひメディア学部で学んで高いメディアリテラシーを持つ学生になってほしいと思います。

プロフィール

氏名 川端 美樹(KAWABATA Miki)
職位/担当分野 教授/メディアと社会・文化分野
専門 社会心理学、メディア・コミュニケーション論
担当予定授業
  • メディア社会論
  • メディアと心理
  • フレッシュマンセミナー
  • ベーシックセミナー
  • メディア基礎演習A/B
  • メディア実践演習1/2/3/4
所属学会
  • 日本社会心理学会
  • 日本マス・コミュニケーション学会
  • 情報通信学会
  • 国際メディア・コミュニケーション学会
  • 日本心理学会
研究内容 さまざまなメディアが人々の現実認識に与える影響を始めとするメディア・コミュニケーションの社会心理学的研究
主な著書・論文
  • 「テレビ親近感とテレビ視聴行動の関連性について」,2007,『社会心理学研究』第22巻第3号 (267~273頁)(共著).
  • 『よくわかる社会心理学』,2007,ミネルヴァ書房(共著).
  • 『社会心理学研究法』, 2007, 福村出版(共著).
  • 『ニュースはどのように理解されるか:メディアフレームと政治的意味の構築』,2008,W・ラッセル・ニューマン他著、慶應義塾大学出版会(監訳).
  • 『異文化コミュニケーション事典』,2013,春風社(共著).
  • 『誠信・心理学事典〔新版〕』,2014,誠信書房(共著).
  • 『メディアと表現-情報社会を生きるためのリテラシー』,2014,学文社(共著).
  • 「メディア接触行動と社会不安:メディア環境の変容による新たな情報探求行動とその影響」,2014,『目白大学総合科学研究』第10号.
  • 「日本人の自然観と環境問題報道-新たなメディアフレームの提言に向けて-」,2017,『目白大学総合科学研究』第13号.