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2017.10.25

イベントレポート:メディア表現学科講演会の報告

 2017年9月26日夕刻、目白大学新宿キャンパス研心館にて、『VRの更新するリアリティ』と題してトーク・イベントが催されました。第20回文化庁メディア芸術祭と連動した、受賞作品を紹介する企画で、社会学部メディア表現学科が文化庁メディア芸術祭実行委員会と共同で開催しました。一般の方も聴講者に交えた80名ほどが、最先端のVR(ヴァーチャル・リアリティ:仮想現実)作品の現在と未来についてのトークに熱心に耳を傾けていました。

 東京工芸大学教授かつゲームクリエイターでもある遠藤雅伸氏をモデレーターに迎え、まずは、メディア芸術祭の受賞者・審査委員会推薦作家である石井晃氏・鈴木一平氏・松本啓吾氏・阿部達矢氏にそれぞれ出品作品の紹介が行われました。

当日会場風景▲ 当日会場風景

 石井晃氏・鈴木一平氏のアート部門審査員推薦作品、《Optical Marionetto》は、カメラとヘッドマウントディスプレイを装着したユーザーの歩行方向を、一定の信号を出すことで操作するという作品です。本人がまっすぐ歩いているつもりでも曲がってしまうという仕組みは、車椅子の方への案内や、無意識に歩いていても目的地に着くといった未来のナビゲーションにつながる可能性があるとのことでした。「VRと言うと、リアルの感覚を体験するコンテンツだと捉えられがちだが、視覚情報をジャックした環境を用いれば、新しいことができるのではないかと思い、制作した」という説明から、従来の発想とは異なるVRへのアプローチが垣間見えました。
 次に、今回のメディア芸術祭でエンターティメント部門優秀賞を授与された松本啓吾氏の《Unlimited Corridor》が紹介されました。同作品は、実際には、湾曲した壁に添った通路を歩いているにも関わらず、ヘッドマウントディスプレイ上で得られるVRの視覚情報からは、高い足場をまっすぐ歩いているような感覚が得られるところに狙いがあります。その際、ユーザーは必ず壁に手を触れながら歩くことを求められます。つまり、このシステムは、視覚や触覚、体性感覚を補完的に用いたところにポイントがあり、その結果、従来のVRのように実空間に縛られず、より開放的な体験ができる利点が生まれたといえます。
 一方、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの阿部達矢氏からは、エンターテインメント部門審査員推薦作品、《anywhereVR》についての紹介がありました。仮想現実としての海や星空を眺める従来のVR映像では飽きが来るのも早い、ならば、そこにユーザーのスマホ画面を重ね合わせ、ユーザーの日常生活に寄り添う「ながらVR」にしてみてはどうか、という試みです。すでに実際に商品として販売されており、研究的・開発的側面のみならず、VRをいかにして売り込むかというビジネスの視点が強く出ていました。VRの商品化の一例としてきわめて印象的でした。

 ”仮想空間を見ながら楽しむ”だけでなく、”仮想空間を体験しながら楽しむ”というVRの新たな手法の誕生を知り、聴講していてワクワクしました。VR作品が提示する仮想空間と人間の感覚との関係が、今後、どのように変化していくのか――興味の尽きない作品紹介でした。

 最後に、開催校教員として登壇した本学科の小林頼子教授からは、フェルメールの代表作《牛乳を注ぐ女》を凸版印刷株式会社とともに3D化したアプリ作品《ViewPaint》の紹介がありました。絵画作品をデジタル化し、立体視することで、画面を見る視点を変えたり、拡大させたりすることが可能となるよう工夫されています。つまり、ユーザーは、描かれた場面を自ら操作し、双方向的に鑑賞することができるのです。エンターテインメント性豊かな絵画の新しい鑑賞法として注目すべき試みでした。

 こうした作品紹介の後、登壇者相互の間でトークが展開されましたが、VRが今後リアルを追及していく上で、クロス・モーダルな感覚の用い方(複数の感覚器官の動員とその相互作用)がますます重視されることになろうという指摘がありました。「VRは、普段自分では体験できないものを体感できる側面を持っていながらも、どこかで体験したことがある感覚があるからこそ感動できる」といった意見が出されたり、「VRの方が本物の世界だと錯覚するようになってしまうのではないか」といった課題も浮き彫りになったりと、トークを通じてテーマの内容が一段と深みを増したように思えました。

 自分の普段見ている世界とは全く違った世界。でも、どこかで体感している感覚だからこそ面白さを感じる。現実世界のリアリティと、VRという仮想の世界が繰り広げるリアリティとの関係性は今後どう変化し、私たちの「リアリティ」をいかに更新していくのか――様々に考えをめぐらす素材が得られるトーク・イベントでした。

(メディア表現学科4年 齋藤諒子、中山徹)

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